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スローライフ賛歌で思考停止しない「my home town わたしのマチオモイ帖」 [レポート]

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東京ミッドタウン・デザインハブ特別展として2014年3月23日まで開催されている「my home town わたしのマチオモイ帖」。タイトルからは「地方のスローライフ万歳」というニオイがする。けれど、この展示には大都会を紹介するマチオモイ帖もある。そうなのだ。この展示は「地方でのスローライフってやっぱりいいよね」で思考停止していない、もっと深い展示なのだ。展示を通して見えてきたものをまとめておきたいと思う。

■マチオモイ帖の始まり
会場で配布していたパンフレットによると、マチオモイ帖は2011年の4月に広島県因島重井町を紹介した「しげい帖」から始まったらしい。白い野の花が表紙で踊る、数十ページの小さな冊子。個人の視点で、自分にとって大切な町、大切な場所をガイドブックのように一冊にまとめたという点が新しかった。
震災をきっかけとした、地域のなかでの繋がりのあり方が見直される気風に乗って、マチオモイ帖は関西を中心に広がっていく。様々なクリエイターたちが、自分の生まれたマチや訪れたマチのマチオモイ帖を作っていった。
そして、その活動は2012年には全国的な活動へ。2014年の今回の展示ではその数800帖となるまでに成長した。

東北のマチオモイ帖
会場に入ってすぐのコーナーにあるのは被災地も数多くある東北のマチオモイ帖。飯館町、気仙沼、南相馬、三陸――新聞でその町の名を何度も見てきた町のものもある。

ナカムラユタカさんの作った「イイタテムラ帖」、「iitatemura帖」。ページをめくって現れたのは、幼い頃の思い出の写真の数々と、原発事故によってその町へと続く道が封鎖された写真だった。
個人の目に、あの事故がどう写ったのかを知ることができた。マスメディアによる再編集がないと、個人から直接話を聞いてきたような気持ちになる。

■同人誌見本市としても壮観
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会場はかなり広い。私自身そのなかを1時間かけて50冊近く手に取ったが、それでも全体の1/10程度だろう。そして驚くのが、その冊子のどれも既視感を感じさせない表現だったということだ。どれも違う。全部違う。写真、イラスト、タイポグラフィーに刺繍…。ああ、こんな方法があったか、と自分が同人誌を作るときに真似したくなるアイデアもたくさんあった。
にもかかわらず、言っていることは大体「海しかねー」「山しかねー」「住宅地しかねー」の三択に収まって いる。…なんだこのステレオタイプさは。こんなにもそれぞれ違った風景なのに、書いている当人は「どこにでもあるでしょ、この風景」と思ってしまうものらしい。いいところを苦心してみつけているのが笑える。故郷はそれくらい自分にとっては距離のない場所なのだろう。

■「何もない町」の未来
読んだ後に暗澹とした気持ちになったマチオモイ帖もある。伊藤恵さんによる三重県の「四日市帖」だ。
四日市――誰もがその名を知っている町。ただし「公害」、「ぜんそく」の町として。
彼女が見た四日市を一言で表すならば「諦め」だ。良いところを探そうとした。けれど、探しても探してもみつからなかった。冷たい眼差しなのではなく、内部の人間が愛をもって真っ直ぐにみつめた結果の「何もない」。この言葉は重い。さっきまでの「山しかない」と故郷を紹介するのとは、少しニュアンスが違う。

最近の四日市といえば「工場萌」の聖地としての立ち位置もあるではないか。外部の人間である私は言う。しかし、それも「廃墟だから、いつかはなくなる」と彼女は語る。その後に、何が残るのか。何もない。
ふと、軍艦島のイメージがよぎる。

四日市は、ご存知の通り高度成長期に石油を中心とした重化学工業地として発展した。その後、公害問題・バブル崩壊を経て市内産業における石油化学コンビナートの比重は低減の一途をたどる。しかし、製造品全体の出荷額そのものは平成15年以降増えている。(参考: pdf" target="_blank">http://www.einap.org/jec/committee/yokkaichi/policy_report_div3.pdf /  http://www.city.yokkaichi.mie.jp/new_multipurpose_project/basic_material.html )平成15年の1.7兆円規模に対し平成19年では2.7兆円規模。産業の空洞化が問題になるなかで、健闘している工業地に見える。それでも「何もない」と思わせてしまうのは、彼女が四日市に求めているものは既に喪われているからではないか。
「何もない」町でも昔からあった、人の繋がりや人に自慢できるちょっとお気に入りの場所。
時代が変わり、必要とされる産業が人が変わり、それまであったものがあっという間に流されて消えていく。

こういう町は、四日市に限らず日本中にあるだろう。マチオモイ帖を書いてもらっている町だって、オブラートに包まれているだけで根っこは四日市と大差ない状況かもしれない。

■気持ちが届いた先に――マチオモイ帖にできること
マチオモイ帖はなんのために作るのだろう?
このおかげで産業が生まれたり、観光地化したり…なんてことはほとんどないだろう。
むしろ、見えてくるのはそういったことだけがマチの良さを測る基準じゃないよね、ということだ。
大都市も地方の町もこの展示では同列だ。
地方だからダメ、大都市だからダメということはまったくなかった。

物事を判断するときに、定規が一つだとわかりやすい。
人は無意識のうちに「たった一つの定規」を求めてしまう。そして、それを使って判断することに慣れてしまう。
どれが一番いいマチオモイ帖だったか? 見れば見るほど選べやしないし、本来そうあるべきだったのです。


■my home town わたしのマチオモイ帖 東京・大阪展
東京ミッドタウン・デザインハブ特別展
2月28日(金)~3月23日(日)
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F

メビック扇町特別展
3月7日(金)~3月29日(土)
会場:クリエイティブネットワークセンター大阪 メビック扇町 大阪市北区扇町2-1-7 関テレ扇町スクエア3F

オフィシャル・サイト

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